HOME ReportLive Report天平&真央樹「Tempei and Maoki Live Tour 2017」@NAGOYA CLUB QUATTRO 2017/12/20

天平&真央樹「Tempei and Maoki Live Tour 2017」@NAGOYA CLUB QUATTRO 2017/12/20

まさに圧巻のひとこと!
会場を大いに沸かせた前半戦

昨年7月にデビューアルバム『kaleidoscope』を発売したピアノ&ドラムデュオ、天平&真央樹。アルバムについてインタビューした際、天平(ピアノ)は「真央樹(ドラム)と演奏するときはフィールドの中でバトルしている感じになるので、お客さんは圧倒されるんじゃないかなと思います」と話していたが、リリースツアー最終日となったこの日、会場はまさしくその言葉どおりの様相となった。

平日夜にもかかわらず大勢の人で埋め尽くされたクラブクアトロ。開始時刻になると照明が暗転し、天平と真央樹が登場した。スポットライトを浴びた天平が美しい音色を響かせて、1曲目「栄光へのファンファーレ」がスタート。最初から二人の息はぴったりで、ピアノ&ドラムだけとは思えないほど重厚なサウンドが展開されていく。観客たちは食い入るようにしてステージを見つめていた。

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1曲目が終わったばかりだというのに、歓声がすごい。どよめきと拍手が入り乱れている。そんな会場の熱い空気を受けて、二人はすぐに「夜行列車」を演奏し始めた。軽やかなピアノの音色をドラムのシャープなビートが際立たせ、流麗な音楽が響き渡る。この曲は「夜行列車を乗り継いでヨーロッパを旅していたときに着想を得た」そうだが、そのときの天平の気持ちがありありと伝わってくるようだった。ワクワクとドキドキ、少しばかりの不安。そして未だ見ぬ世界への期待が、情感たっぷりのサウンドで表現されていた。

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MCでは「みなさんこんばんは。東京、大阪に続いて最終日は名古屋です。ところで名古屋弁ってなにがありますか?」とリラックスした雰囲気で話す天平。「うみゃー!」とフロアから声が上がると、真央樹が「じゃあ“エビフリャーはうみゃー”ということですね」と合いの手を入れて笑いを誘った。先ほどまでの緊張感あふれる演奏と打って変わって、MCでの二人はとても穏やかだ。

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アットホームな雰囲気がフロアに広がったところで、3曲目「君をのせて」が始まった。「君をのせて」といえばもちろん、映画「天空の城ラピュタ」の主題歌である。儚げな曲調を想像すると思うが、天平&真央樹のそれは違う。疾走感あふれるアップテンポな曲調に仕上がっており、二人の想像力豊かなアレンジに驚かされた。

ここで真央樹が一旦ステージ袖に消え、天平のピアノソロで「フレイム」が演奏された。十指すべてがダンスしているかのような鍵盤さばきだ。何層にも重なった音色のレイヤーが心地良い。その流れを継ぐようにして、次もソロで「一期一会」(即興)を披露。曲中に何度も現れた美しいメロディーは、坂本龍一の「Merry Christmas Mr.Lawrence」に近いものを感じさせた。

「次の曲で前半は最後になります」という天平のアナウンスの後、ラストは「真・幻想曲」を披露。超絶技巧とメロディアスな曲調があいまった名曲である。たたみかけるように音を出す二人。その熱いパフォーマンスに、観客たちはただただ圧倒されているようだった。そして演奏が終わりを迎えたとき、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

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ゾーンに入った後半戦。
二人にしかできない”命”の表現でフィナーレへ

約15分の休憩を挟んで、まずは天平がステージに登場。後半1曲目「麗しき故郷」について語った。「僕は幼いときに阪神淡路大震災を経験しました。その際、被災支援は長いあいだ必要だということがわかって。2011年3月11日に東日本大震災が起きたとき、僕は支援を始めたんですが、このまえ数年間にわたる活動が終了しました。故郷を失うことの苦しみや、故郷から追われることの悲しみが、どれだけ深いかを知りました。そんな経験から生まれた曲をやります」。

「麗しき故郷」はこの日演奏された曲の中で、もっとも繊細な響きを放っていた。シリアスでネガティヴな曲調ではなく、痛みや苦しみを浄化するような優しい音。やはり経験に裏打ちされた音楽は心に迫る。

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続いて『kaleidoscope』の中でもジャズ色が強い一曲「龍の涙」を披露。幅広い音楽性に驚いているのも束の間、続く真央樹のドラムソロがものすごかった。複雑なリズムパターンをいくつも展開し、正確無比なビートを刻む。ドラムとカラダが一体化したかのような姿はさながら”ヒューマンドラムマシーン”である。ほとばしるような熱いグルーヴに圧倒された。そして、このドラムソロの熱気を引き継いで、二人で「ペガサス座標」をスタート。演奏が終わったときに聞こえた「ブラボー!」という観客の叫び声が、そのすさまじさを表していた。

ここからの数曲はさらに圧巻だった。まずは天平のソロピアノによる「星空になった小龍」(即興)。天平は演奏を始める前にこんなことを言っていた。「今年はとても濃い1年でした。年間220〜230本くらいコンサートを開いて、めちゃくちゃ楽しかったんですけど、心にぽっかりと穴が空いたときがあって。そしたらその穴に”鬼が宿った”んです。なにか恐ろしいものが宿って、それに取り憑かれる感覚というのかな」「それに加えて、大切な友人が亡くなってしまう、という出来事もありました。今年はそんな重いテーマを背負い込んだ1年でした。人が生きること、死ぬこと。エネルギーを振り絞ったあとに現れた、恐ろしい鬼のこと。これらにまつわる自分の思いを即興で表現したいと思います」。

最初の一音はもの悲しげだった。そこから一気に叙情的な音色が広がっていく。キャッチーな曲調とは言い難い。リズムも取りづらい。しかし、何ものにも変えがたい鮮烈なメロディーがある。その旋律は天平の心情を表しているように聴こえた。鬼の誕生、死の知らせ。それらが天平にどのような影響を与えたのか。それが”音”という媒介を通してフロアに伝わっていく。

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天平はひたすら演奏に没頭していた。まるでピアノに取り憑かれているようだった。このとき天平は、即興という行為を通して、鬼や命の存在を音で表現しようとしていたのかもしれない。あるいはその存在理由を、音で解明しようとしていたのかもしれない。そう感じさせるほどの没頭感があった。弾き終わった後に放心していたのは、長くゾーンに入っていた反動だろう。

次に披露されたのは「君と過ごした夏の幻」。先ほどの即興を経た上で聴く美しいメロディーは、音源よりも深く心に響いた。幽玄な音色が会場のすみずみまで広がっていく…と、そこへ突然ドラムが入る。心臓が脈打つような力強いビートがピアノと合わさったとき、ぶわっと鳥肌が立った。ここではないどこかへ行ってしまった美しい幻と、いまここでリアルに鳴る生命の鼓動。この二つが鮮やかなコントラストで表されているようだった。まちがいなくこれは、二人にしかできない命の表現だった。

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続くは後半ラスト「火の鳥」である。その名前を聞けば、まず連想するのが手塚治虫だろう。彼が描く火の鳥は命を司る存在だ。偶然なのか意図的なのかはわからないが、「星空になった小龍」から続くテーマと呼応している。二人はピリッとした緊張感のもとでアグレッシブなパフォーマンスを見せた。奏でられるのは、生命の誕生を祝うような大迫力のサウンドだ。フロアの熱を最大限にあげて演奏を終えると、観客たちは盛大な拍手で讃えた。

拍手はもちろんアンコールに変わる。天平が「名古屋大好きだぎゃ〜!」と名古屋弁を駆使しながら登場すると、真央樹と共にNeo Resistance Quartetto(天平&真央樹の原型となったカルテット)の「戦場からの恋文」をスタート。ふたたび会場にエモーショナルな空気を作り出した。さらに「もう一曲いきましょう!」と天平が勢いよく宣言し、披露したのは「革命のエチュード」。ショパンの名曲を疾走感あふれる曲調にアレンジしたものだ。確かな技術に裏打ちされたハイレベルなサウンドで観客たちを沸かせた。

それでも拍手は鳴り止まず、二人はこの日三度目の登場を果たす。本当のフィナーレを飾ったのは「火の鳥」だ。しかも先ほどとは違うアレンジである。観客たちは圧倒的な高揚感に言葉が出ない様子で、最後まで二人に目が釘付けになっていた。後に訪れた拍手の雨と大歓声は、二人がステージを後にするまで鳴りやまなかった。

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ライヴ終了後はサイン会が開かれた。天平も真央樹も一人ひとりと丁寧に握手をかわし、笑顔で話す。MCでも感じたことだが、二人とも人柄の良さが態度に滲み出ていた。それも人気の理由のひとつなのだろう。ちなみに、サインをもらう人の中には、今回が”15回目のサイン”というファンもいた。無理もない。二人の真価はライヴでこそ発揮されるのだから、何度も足を運びたくなる気持ちはわかる。もしまだライヴに行ったことのないリスナーがいたら、ぜひ足を運んでほしい。音源とはまた違う表現に圧倒されるだろうし、何よりも、その日・その場所でしか起こらない“流れ”を通じて大きな感動を得られるはずだ。

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(文:東憲吾 写真:永縄貴士)

Official Site

http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A025805.html

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