HOME ReportLive ReportClimb The Mind「『チャンネル3』リリースツアー」@今池HUCK FINN 2017/11/03

Climb The Mind「『チャンネル3』リリースツアー」@今池HUCK FINN 2017/11/03

名古屋の音楽シーンが誇る
エモロックバンドの真髄

今年2月22日に発売した3rdアルバム『チャンネル3』は、Climb The Mindの音楽がさらに進化したことを証明する1枚だった。持ち前のエモーショナルなギターロックを下敷きに、より“歌モノ”の色合いを強めた10曲。山内幸次郎(ヴォーカル/ギター)の詩世界は深みを増し、メロディーはさらに美しく研ぎ澄まされた。バンドとしてはドラマーの脱退・新ドラマーの加入という大きな変化を経験したが、それによる不調の様子は全くなく、アルバムでは力強いアンサンブルを響かせている。リスナーは完成度の高い楽曲を聴いて、諸手を挙げて喜んだにちがいない。ただ、この日のライヴに足を運んだ人たちはそれ以上の興奮を感じたと思う。なぜなら『チャンネル3』の収録曲すべてを完全再現した上、バンド史におけるアンセムもふんだんに披露した贅沢な一夜だったからだ。

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「ハックフィンってこんなに人、入るんだ」「ギュウギュウすぎてパーソナルスペースがない…」。そこら中から聞こえてくる笑い声と、溜息まじりの話し声。足の踏み場もないほど人で埋め尽くされた会場は、期待が熱気となり渦巻いているようで息苦しかった。満員電車の中にいるような窮屈さを感じながらメンバーの登場を待っていると、急にSEが変わった。数日前の東京公演でも話題を集めた鈴木実貴子ズの楽曲「アンダーグラウンドで待ってる」だ。フロアに満ちていたざわめきが消えていき、不思議と息苦しさも感じなくなる。そして山内、富田昌樹(ベース)、北野由樹(ドラム)がステージに現れた瞬間、フロアからドッと歓声が上がった。

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1曲目は「プールの時間」。最初から一体感のある演奏で、サウンドの隅々にパワーがみなぎっていた。北海道、東京でのライヴを経て、しっかりと脂が乗っている状態だ。観客たちも気持ち良さそうに体を動かし始める。続いて「ポケットは90年代でいっぱい」「心のすべて」「耀け自販機」が演奏された。懐かしさや愛おしさ、郷愁、哀愁…そういった淡い感情がパワフルなロックサウンドによって増幅され、フロアを熱く染め上げていった。

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「今日はたくさんの方に来ていただき、ありがとうございます。人気があるのは北野くんのおかげかな?」とMCで話す山内。歌っているときの切実そうな表情とは変わって、穏やかな笑顔が印象的だ。「Tシャツもつくりました。2000円で安いですよ」とゆっくりとした口調で話していると、「休憩長くなーい?」という声が。それに対して山内が「うん、ワンマンだしね」とのんびり答えると、フロアはあたたかな笑い声で満たされた。とてもアットホームな雰囲気だ。そして「今は物販コーナーに誰もいないから、CDやグッズが“盗み放題”ですよ……。次は『泥棒』という曲をやります」とにこやかに話し、再び笑い声が起きる中ライヴの続きが始まった。

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音が鳴ると空気は一変した。アルバム中盤の楽曲「メタボリズム」「タッチ」がテンポよく演奏されていく。収録曲すべてに言えることだが、やはり山内の書く歌詞は豊かで独創的だ。文法をやや無視している箇所もあるし、一文と一文が意味的につながっていない部分もあったりする。それでも言葉の一つひとつが音に乗って耳に届くたび、脳内にさまざまな情景が浮かんで、胸がキュッと締めつけられる。これこそ理屈を超えた美しい“詩”なのだろうと思った。

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「次の曲は東京、北海道で演奏したときに、失敗してやり直してしまった曲です」という紹介のもと、北野のドラムソロから「ピンクの電話」がスタートした。しかし北野は「これ叩けないですね(笑)」と中断。え〜っという観客の笑い声の中で、「もう一回!」と富田が声をかけて再開する。ハプニングと言えばそうなのかもしれないが、そんな緊張感は微塵も感じない。見事演奏し切った後「あしべ」を披露すると、「あと1曲で終わります」と山内。観客たちに惜しまれながらもラストは「デスマッチ」で終了した。しかし、アウトロが鳴り止まないうちに拍手が巻き起こる。3人はステージの袖へ消えていったが、拍手はすぐに手拍子に変わった。そしてあまり間を置かずに、再び3人が登場した。

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「ありがとうございます。アンコールにお応えして6曲演奏します」と山内が宣言し、バンド初期の名曲「サブカルチャーエンジニアリング」が始まる。痛切さがそのまま音になったようなギターの旋律と、それを聴いて大歓声を上げる観客たちのアガリっぷりに、思わず鳥肌が立った。サビの<僕らは必死で生きているんだ>の部分ではフロアの至るところでガッツポーズが上がり、ここにきて一番の盛り上がりを見せた。

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その後は「萎れた栞」「萌える傘の下」が続く。そして「ここからは言うなればガテン系です」と山内がアナウンスして始まった楽曲は「他愛ない告白」。泣き叫んでいるような音色のギターソロは圧巻、聴く者の鬱屈とした感情を昇華するエネルギーすら感じられた。続いて「優しいサイクルを」が始まると、さらに会場の温度は上がり、サビでは観客の多くが一緒に歌っていた。興奮さめやらぬまま、最後に披露されたのは「ほぞ」。歴代の代表曲を次々に投下して観客たちを沸かせ、充実のアンコールは幕を閉じた。

「ワンモア!ワンモア!」。まだまだ足りない、もっと聴かせてくれ!と言わんばかりのラブコールが再び起こる。その声に応えて、この日三度目の登場を果たした3人。山内が「今日は本当にありがとうございました」と真摯な態度で感謝を告げると、「ベレー帽は飛ばされて」がスタートした。フィナーレを飾るにふさわしい名曲だ。サビに差し掛かると山内がマイクから離れ、会場にいる全員で大合唱が起こった。このとき、Climb The Mindが深く愛されていることを改めて実感した。最後のドラムソロに差し掛かった際、ライヴが終わってしまう名残惜しさを感じたが、静寂が訪れた瞬間に巻き起こった歓声で、胸の中は深い感動に満たされた。

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『チャンネル3』の完全再現ライヴに、バンドの代表曲を詰め込んだアンコール。その両方を聴いて思ったのは、彼らの音楽は絶えず更新されているということだった。『繋がる瞬間にシャッターを』の「サブカルチャーエンジニアリング」、『よく晴れた朝は地下を探索しに出かけよう』の「萌える傘の下」、『ほぞ』の「ベレー帽は飛ばされて」、『チャンネル3』の「デスマッチ」…もちろんこれだけと言うつもりは全くないが、どのアルバムでも必ず新しい名曲が生まれている。それはコピー&ペーストのような方法で量産されたものではない。歌詞、サウンド、楽曲の構成はもちろん、すべての要素が時を追うごとに進化している。だからこそ、彼らの音楽は世代を超えて愛されているのだと思った。活動当初から聴いている古くからのファンもいれば、ニューアルバムに魅せられた新しいファンもいる。こうした魅力あるバンドが地元・名古屋で愛され、そして活動し続けていることがただただ嬉しい。そんな気持ちにさせられる素晴らしいライヴだった。

(文:東憲吾 写真:永縄貴士)

 

セットリスト
1. プールの時間
2. ポケットは90年代でいっぱい
3. 心のすべて
4. 輝け自販機
5. 泥棒
6. メタボリズム
7. タッチ
8. ピンクの電話
9. あしべ
10. デスマッチ
EN1. サブカルチャーエンジニアリング
EN2. 萎れた栞
EN3. 萌える傘の下
EN4. 他愛ない告白
EN5. 優しいサイクルを
EN6. ほぞ
EN7. ベレー帽は飛ばされて

 


 

ライヴスケジュール
『「PICK ME UP vol.8」CARD2017忘年会』
・2017年12月3日(日)大阪/心斎橋CONPASS
CARD / Climb The Mind / uncommon ghost / スーパーノア / DJ DAWA(FLAKE RECORDS)

詳しくはオフィシャルサイトまで
チケットぴあ 中部・北陸

Official Site

http://www.climbthemind.com

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