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佐藤タイジ「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017 」インタビュー

9月23日、24日の2日間に渡り、岐阜県中津川市で中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017 が開催される。

2011年3月11日に起きた東日本大震災を機に佐藤タイジ(シアターブルック)が始めたフェス・ THE SOLAR BUDOKAN 。その最大の特徴はコンサートの運営に関わる全ての電力を、太陽光発電によってまかなうという取り組みだ。そしてフードコートで提供される全メニューに放射線量が表示されるのも、このフェスならでは。その背景にあるのは子供たちの未来を守りたい、という佐藤タイジの切実な願いだった。6年目となる今年は「Family Forever Family」をテーマに掲げ、キッズエリアを更に充実。子供も大人と同じように、様々な音楽体験をすることができる。太陽の恵みがもたらしたピュアな音色と、未来を願うピュアな想いで出来たフェス・それが中津川 THE SOLAR BUDOKAN なのだ。その魅力をオーガナイザーである佐藤タイジに語ってもらった。

(取材、文:イシハラマイ インタビュー編集 :菊池“カフカ”嘉人 画像作製:笠原幸乃)

 

他のフェスより踏み込んで子供のことを考えたいと思っていた


――震災から6年が経ちました。タイジさんはあの日をどう振り返りますか?

佐藤タイジ:俺にとってはグレート・リセットでしたね。当時は全ての日本人にとってもそうだったと思います。でも最近、3.11で学んだ教訓が忘れられているな、と思う出来事も多くて辟易してる。いい大人が嘘をついたり、弱い者イジメをしたり……あの時はすごい勢いで助け合ったのにね、って。ただ、クリエイティビティが戻ってきたな、という感覚はあります。

――それを実感するのはどんな時ですか?

佐藤:最近、音楽だけじゃなく映画やミュージックビデオなどでもオリジナリティーの高い作品やクリエイティブな作品が増えてきて、クリエイティビティが正常に戻ってきたな、と感じるんですよね。当時は全体がショック状態で、その影響をアーティストも食らっていたと思う。俺が中津川 THE SOLAR BUDOKAN を始めたように、緊急事態が故のクリエイティビティはあったと思うんだけど、それは少し違うんだよね。だからようやく、良い作品を作ろうっていうモチベーションやクリエイティビティが戻ってきたのかなって。

――そういった状況の変化は、中津川 THE SOLAR BUDOKAN を運営していく上でも感じていますか?

佐藤:緊急事態が過ぎ去ったと言い切れるかは分からないけど、あの時と状況は変わってきているのは確か。中津川 THE SOLAR BUDOKANの今年のテーマは「Family Forever Family」なんですけど、キッズエリアを充実させるんですよ。自分自身も震災以降に子供が生まれたこともあって、他のフェスより踏み込んで子供のことを考えたいと思っていたんです。それで今回このテーマを出したら、地元チームやスタッフからの“待ってました感”がすごくて(笑)。コンテンツのアイディアがドサーっと出て来たんだよね。それはこのタイミングだからこそ、ピタっとはまったのかなって思う。あと、みんなやっぱり子供に対して真剣なんだよね。色んな仕事があるけど、子供に関してはみんな一生懸命できるんだなあ、と。

――キッズエリア・こどもソーラーブドウカンでは、楽器を作って演奏できたり、プロのミュージシャンから演奏の指導を受けたりと、子供が音楽そのものを楽しめる仕組みがあります。他のフェスでもキッズエリアはありますが、子供が音楽体験そのものを持ち帰ることができるコンテンツは、中津川 THE SOLAR BUDOKANならではだと思いました。

佐藤:そう!そこは頑張ろうと思ってる。俺らがやってる電力のこととか、放射線量のこと、そして子供のこと。これらを全部つないでいるのが音楽だから。それを伝えたい。もしかしたら子供の方がより分かってるかもしれないけどね。食べ物の放射線量を表示するのも、要は子供向けのことなんですよ。大人は別にいいの。俺なんかもう歳だしさ。でも子供たちは吸収率が高いし、大人とは違う影響が出るかもしれない。それをどこかのおじさんは「大丈夫」って言うんだけど、何を根拠に言ってるんだバカヤロウと思うわけ。そこに関しては一部の責任をもつべき大人が持っていないなと感じているので「冗談じゃねえぞ」って。

 

音の良さは太陽からのギフト


――中津川 THE SOLAR BUDOKAN、そしてタイジさんの描く未来に必要不可欠なソーラー電力について伺います。3.11直後は節電の風潮が強まり、ライヴを自粛したりアコースティックに切り替えたりミュージシャンもいました。そんな中、タイジさんはなぜ電気を作ってフェスをすることを選んだのでしょうか。

佐藤:俺ね、基本的に電気は好きだもん。でもそれを何で作るかなんだよね。それを作るときにどんなリスクがあるのかを、3.11が起こるまで我々は知らなかった。いや、原発のリスクはチェルノブイリで知っていただろうけど、自分の都合の良いように見て見ぬふりをしていたんだと思う。それで原発は良くない……となった時に、フジロックはそれ以前からGypsy Avalon のステージをソーラー電力で運営していたので、そのスタッフと一緒に全部をソーラー電力で運営するフェスをやってみようという発想になって。試しに自分のギターアンプをソーラー電源で鳴らしてみたんだよね。そうしたら音が良かった!という。

――中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017 の公式HPで公開されている、通常の電源とソーラー電源の音を聴き比べられる動画を観ましたが、あまりの違いに驚きました。

佐藤:もうこれは太陽からのギフトだよね。元々は原発が怖いからソーラーでやろう、と始めたことだけど、中津川 THE SOLAR BUDOKANがどんどん成長していったのは、音が良かったからだと思う。ソーラー電源だと音が良いっていうのを皆が体感して、それを聴いてみたいっていう人がどんどん来てるんだよね。

 

真ん中にシアターブルックがいるから中津川 THE SOLAR BUDOKANは成功した


――中津川 THE SOLAR BUDOKANの良さは、タイジさんの想いや開催主旨をしっかりと伝える一方で、音の良さや家族で楽しめる仕組みなどもアピールしているところだと思います。だからこそシビアなテーマを扱いながらも、良い意味で敷居が低いんですよね。

佐藤:それはもしかしたら最も大事な部分かもしれないね。俺は中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017 には考えうる限りの色んな美しさをコンピレーションしているから、色んな楽しみ方ができるはず。出演者も04 Limited SazabysからCHABOさん(仲井戸”CHABO”麗市)と、幅広い年齢になっています。 色んな世代がいることって、実は大事なことなんだよね。そこは一定のマーケットだけでやるフェスとは根本的に違うところ。だから色んな音楽があって、色んなスタイルがあることを体験してほしい。食べてみないと美味しいかどうかは分からないからね。食わず嫌いをしていたら、いつまでも味覚は狭いままだし。美味しさにも色々あるから、閉ざしていたら感じられないしね。

――バンド主催のフェスだと、出演者が同世代の繋がりになることも多くなります。しかし中津川 THE SOLAR BUDOKANでは、縦横両方の繋がりによる幅広いラインナップが実現していることも魅力だと思います。

佐藤:そう。漠然とある世代間のギャップをほぐしたいんだよね。だから美奈子さん(吉田美奈子)とかにも若手と話して欲しいし、若いお客さんやアーティストの中には「シアターブルックの人がオーガナイズしてるらしいよ」って情報は入っていても、シアターブルックの音楽は知らないっていう人もいると思う。でも中津川 THE SOLAR BUDOKANが成功しているのは、俺が売れているからじゃない。思いが純粋で周りを巻き込む力がでかくて、先輩にも後輩にも頼れるヤツがいて、仲間が出来たから。そのどれもが、真ん中にシアターブルックがあるから出来たことなんだよ。だから本当にたくさんの人にシアターブルックを観て欲しい。そういう思いから、出演は初日のトリひとつ前にしています。いつもはトリにしていたんだけど、帰りのバスの関係で観られないって人がいたからね。

 

フェスは未来社会のサンプル。次の社会はアーティストが切り開く


――中津川 THE SOLAR BUDOKANのオーガナイザーとして、他にも力を入れていることはありますか?

佐藤:こどもソーラーブドウカンのこともそうだけど、音楽ライヴやDJ以外のワークショップやディスカッション、トークショーにも毎年力を入れています。自分が海外のフェスに遊びに行った際にもトークショーで音楽以上の衝撃を受けたことがあって、そういう体験ができるのが、フェスだと思うんだよね。だからその部分は他のオーガナイザーより高いプライオリティーを持っていると思います。俺はね、フェスは未来の社会のサンプルだと思ってるんです。そして次の社会を切り開くのはアーティストだと信じてる。政治家は切り開かないよ。分別ゴミに関しても、90年代にフジロックが始めた取り組みが、一般の社会に導入された。だから中津川 THE SOLAR BUDOKANを通して我々も次の未来を描きたい。

――タイジさんの思い描く次の未来とは、どんなものですか?

食べ物の放射線量が表示してあって、再生エネルギーだけで運営ができる、という未来にしたいし、そうなって欲しいと思っています。日本は構造の作り方が昭和で止まっているんだよ。新しい構造にしなきゃいけないところをできなかった。この国がどうなって行くかは分からないけど、中津川 THE SOLAR BUDOKANは前進し続ける。3.11が分岐点だとしたら、俺は今日本が進んでいる方向とは違うものを中津川 THE SOLAR BUDOKANで表現しているつもり。約3万人って、日本の全人口からしたらすごく少ない人数だけど、2日間あの場所にいる人たちには俺たちの理想の日本を教えられると思う。中津川 THE SOLAR BUDOKANがあるから、俺は震災以降も自分の精神を平常な状態に保って来られたんだよね。だからフェスは未来のサンプルなんだってことを、いつも自分に言い聞かせています。あと、日本はアーティストの使い方が下手くそだよ。

――それはどういう意味ですか?

佐藤:アメリカで10年前くらいに“ブルックリンバブル”というのがあって。それはニューヨークのアーティストたちがマンハッタンの家賃は高いからって、(比較的家賃の安い)ブルックリンに住んだのが始まりなんだよね。それでアーティストたちが集まると街がちょっとオシャレになるから地価が上がるという仕組み。日本にも良いアーティストがいるんだけど、皆景気が悪いんだよ。ミュージシャン含め。でも作品を作るのをやめられないのがアーティストだからさ。そこを上手に使えばいいのに、日本の経済をコントロールしている人たちは本当にアーティストの使い方が下手くそなんだよ。だからこそ、アーティスト自身が次の時代を切り開いて行く。俺は太陽エネルギーだけでフェスができるってことを実証したから、自信を持ってるんだよね。原発はいずれ全部廃炉になるだろうし、ガソリンや火力にも限界がある。そうしたら再生エネルギーだけでやっていくしかないんだよ。あとはそれをどれだけ安全に、効率良く運営するかだけで。だからそうなった時、中津川 THE SOLAR BUDOKANの価値はとんでもないものになっているはずなんだ。

 

土地の持つエネルギーが、人を惹き付ける


――街とアート、という意味では中津川も音楽と密接な土地ですよね。古くは日本初の野外フェス・全日本フォークジャンボリー、そして今は中津川 THE SOLAR BUDOKANが開催されています。

佐藤:フォークジャンボリーと中津川 THE SOLAR BUDOKANって、絶対無関係じゃないと思ってるんだよね。中津川 THE SOLAR BUDOKANでもフォークジャンボリーのブースを作って紹介しているんだけど、すごいんだよ。チケットが木の札だったり、ステージもみんなでロープを引っ張って柱を立てていたり、全部手作りなんだよね。しかもそこには「ウッドストックより1ヶ月前にやるんだ!」「アメリカには負けねえ!」みたいな気合いがあってさ。そんなフォークジャンボリーがあった土地だからこそ、中津川 THE SOLAR BUDOKANが成立して、しかも成長していってるんだと思うんだ。

――そして中津川市は昭和62年に市議会で「核兵器廃絶都市」を宣言している土地でもあります。

佐藤:すごい繋がりだよね!偶然なんだろうけど、でもそんなわけない。辻褄が合い過ぎてるし、土地が引き寄せてるんだと思うよ。土地の持つエネルギーが、人を惹き付けるんだよね。それを神秘的というのかは分からないけど、俺はすごく納得がいってるんだよね。だから、中津川でやっていく意味は、これからもっと大きくなっていくと思っています。

 

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017

日時:2017年9月23日(土)~9月24日(日)開場10時00分 / 開演11時00分
場所:中津川公園内特設ステージ
チケット:9月23日(土)入場券¥8,900(税込)、9月24日(日)入場券¥8,900(税込)、2日通し入場券¥13,900(税込)

チケットぴあ 中部・北陸

Official Site

http://solarbudokan.com/2017/

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