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The Cheserasera『dry blues』インタビュー

The Cheseraseraが8月2日に『dry blues』をリリースした。

今作は収録曲のすべてが「愛」の歌。宍戸翼(ヴォーカル/ギター)のソングライティングとしての真骨頂――YES / NOでは言い切れないグレーゾーンの感情を巧みに表現している。また歌声・サウンド・リズム、そのどれもが表情豊かで芳醇であり、曲に潜む「愛」における感情の起伏が描かれた11曲が揃った。改めてThe Cheseraseraが、正解がないものに抱く気持ちを歌へと昇華することに長けているバンドだと感じさせてくれる1枚だ。

今回のインタビューでは『dry blues』について、また10月に控えるツアーに向けて話を聞いた。

(取材、文、画像作製:笠原幸乃)

 

僕は「愛とは何なんだろうか?」ということに悩み続けてきた


――今回のアルバムは愛についての歌が集まりました。最初からこの方向性を決めていたのでしょうか?

宍戸翼(ヴォーカル/ギター):そうではなかったですね。大本のテーマはいつも通りで変えたつもりはないんですけど、書いてみたら愛についての曲が揃いました。出会いと別れの中で生まれてきた歌が、自然と11曲集まった。僕の人生の上でそういうタイミングだったのかなって思いますね。

――宍戸さんにとって「愛」は大事な核のひとつなんですね。

宍戸:物事ひとつとってみても、「そこに愛はあるのか」っていうことを考えています。結局、僕は「愛とは何なんだろうか?」ということに悩み続けてきた人間で、そんな人間として1番良い作品になったなと感じています。

――「愛が真っ赤とは限らない」という宍戸さんのコメント通り、愛における様々な心情が描かれていますね。

宍戸:基本ノンフィクションで書いた歌詞なので、愛を通しての​物の見方がもろに出てます。ちょっと素敵な思い出にしたいなって詩的な表現や僕の願望、あとは価値観など、少しフィクションが混ざってはいますけど。

――人生観が反映された作品になったということでしょうか?

宍戸:今までやってきたことって、「この思い出をきれいに残したいな」って曲を作ることで心情の支えにしてたんですよ。傍から見たらただ悲しいだけの思い出であったとしても、僕にとっては素敵な部分もあった。本当はきれいだったんだけどなぁって。

――思い出を肯定したいという気持ちが強いのは、承認欲求もあるのでしょうか?

​宍戸:どうなんだろう……。悲しい思い出には素敵な部分もあるように、物事に関して正解はひとつじゃないなって思うんですよね。だから、オリジナリティを持って良いものを作れる人間が優れている、それだけが正しい世の中では寂しいと思うんです。なぜなら僕は自分のことを中途半端な人間だと、凡人だと感じながらここまできたから。「あんまりできた人間じゃないけど、頑張ってきました」という気持ちがありながらも、今こうやってバンドを続けている。元々は曲を作ることで、普段から抱く気持ちから救われるような気がして、僕自身の鍵にするためにも歌を作っていました。だけど、僕と同じように自分のことを中途半端な人間だと感じている人たちにとって、少しでも何かの鍵なればいいなと今改めて思っています。特に今回は思い出をきれいに残す作品作りをしてきた僕としても、バンドとしても、達成感が強いです。

――インディーズに戻って自主レーベル「dry blues label」を立ち上げた環境の変化も、関係していると思いますか?

宍戸:もちろんインディーズに戻ったことで決意が変わったけど、それで作品が良くなるかというとそうでもない。今までもずっと全力だったし、今も全力です。だから作品作りに対する姿勢は『dry blues』も同じでしたけど、アルバムをどこまでも届かせようという気持ちが1番ありましたね。​演奏もすごく楽しくできたし、それもあるかな。今回は今までの方法が最も洗練された作品に辿りつけたと思っています。

 

出来る出来ないじゃなくて、やるかやらないか


――あちらこちらに散りばめられているドキっとするような歌詞に、表情豊かなバンドサウンドが加わることで、より一層胸にグサっと入ってきました。どんな意識をしたのでしょうか?

宍戸:強い言葉の時に強いオケを当てたらガツンとくる効果になる。でも強い言葉にふっと力を抜いたようなオケの当て方をすると、別の感情やニュアンスが呼び起こせると思っているんですよ。歌詞とメロディーと曲のバランスに気を遣いながら、文字からは出てこない感情の部分も表すようにしました。

――個人的な感情を含む曲をバンドサウンドへ落とし込むことは、難しいようにも思えるのですが。

宍戸:たぶん、そこは似たような人間が集まってるのかもしれないですね。メンバーそれぞれ独自に曲の解釈をしたり曲を噛み砕いたりして、プレイとかフレーズを決めてくるんですけど、ほとんど「それはちがうよ」っていうことはないです。あまりにも違った時だけ、そこは「1回歌に譲ってくれないか」って言ったりもする。だけどリズム隊は歌に寄り添って作ってくれるから、大方は意外と自然にハマっていきますね。

――今作のリード曲は「Blues Driver」ですね。

宍戸:最後の方に作った曲なんですけど、自分の中でなかなかグッときて。曲を作っていた時、友達にもらったギターのエフェクターが部屋にポンと置いてあったんです。「そう言えば、一緒にバンドやってた時もあったな」ってその思い出に導かれて、すぐにまとまった歌なんですよね。作り上がった瞬間にこれを強く推したい、聴いてもらいたいなと思って。今バンド辞める人ってすごい多いんです。辞めてしまったら発言する場もないし、曲も作らないから、その人たちが抱えていた感情が表に出てこないんですよ。僕は話を聞いたりするから分かってるつもりだし、バンドを辞めた人たちの想いを代弁……と言ったらおこがましいんですけど、そんな歌になればと思っています。

――MVは衝動性のあるストーリー仕立てになっていて、ラストで宍戸さんがスーツ姿で泣く場面も印象的でした。撮影はどうでしたか?

宍戸:楽しくやりました。「I Hate Love Song」と同じ監督(はまいばひろや)なんですけど、“演じる”というコンセプトはありましたね。前からやってみたいって僕も言ってたし、彼が思い付いたのも同じだったんで、やっちゃえばっていう話になって。出来る出来ないじゃなくて、やるかやらないかだと思ってるんですよ、すべては。だから、何事もやる方向でいきたいなって思ってやりました。

「Blues Driver」Music Video(8曲目に収録)

「I Hate Love Song」Music Video(1曲目に収録)

――他に収録曲の中で印象深いものありますか?

宍戸:「乱れた髪を結わえて」と「フィーリングナイス」ですね。どっちも大学生の時に作った曲をアレンジした歌です。「乱れた髪を結わえて」は、大学2年生ぐらいの時に書いたんですけど、人と接すること自体まずうまくなかったし、恋なんてもっとうまくできなくて。そういう情景描写と共に、夏の公園を思い出して作りました。もう1曲の「フィーリングナイス」は、大学に行かずに家にいた時期に書いた曲ですね。冬になると家から一歩も出ずにダウナーな気持ちになっちゃって、このまま布団の上から一歩も動かないままで、好きな子に会いにいきたいなって思って生まれた歌です。どちらも大学生の時の感情がダイレクトにこもっている歌です。

――大学生の頃に作った曲だなんて驚きました。

宍戸:この2曲は好きな曲だったけど、前のアルバムまでにマッチングとして入ってこなかったんですよね。

 

自分たちがこうだぞっていうのをやり続ける


――リリースして日が経って、リスナーの声が届き始めていると思います。今の気持ちはどうですか?

宍戸:エゴサーチの鬼なんでTwitterとかで色々と見ていたりするんですけど(笑)、アルバムを出す前までは「これは本当に良い作品なんだろうか」っていう疑いがあるんですよ。どうしても。絶対良いと思っても本当に素晴らしいものとして届いているのか不安なんです。でも今回はちゃんと反響もあって良い作品だなと言ってもらえた……そうやって届いたと思える瞬間は、本当に嬉しいですね。

――これからどのようにもっと届いていけばいいなって思いますか?

宍戸:僕は歌いたいことを歌ってきたけど、分かりやすい歌が多い今の時代としては、あんまりいないタイプだったのではないかと感じていて。『dry blues』が届いていくことで、いろんなことを歌えるような空気感や時代、シーンがもっと広がったら楽しいなと思っています。流行に乗っかるのもいいんですけど、自分たちがこうだぞっていうのをやり続けるバンドがいないと、しかもそれを圧倒的にカッコいいレベルでやらないと、音楽自体が面白くなくなっていくって思うんですよね。僕はそういう人としてやっていきたいです。

――店着日に『dry blues』が完売していたお店もあったそうですね。

宍戸:嬉しかったです。売ってくれている人に感謝の気持ちを持っているんですけど、ある種驚かない部分もあって。ずっと信じてちゃんと努力して、このアルバムを売ろうとしてきたから。今後も熱を絶やさずに、作品作りだけじゃなくて売っていくということをもっと頑張んないとなって思いましたね。

――10月からツアーが始まります。名古屋は初日で、前回のツアーと同じ今池HUCK FINNです。

宍戸:HUCK FINNは老舗だし、音の響きも好きです。名古屋のお客さんは、曲に対しての愛情をすごい強く深く持ってくれているなっていう印象があります。『dry blues』を出した分これまでと全く違うセットリストだから、もちろん独特の緊張感があると思います。でもそれと同じくらい喜びもあるだろうし、その喜びを共有できたらいいですね。実はすでに新曲を他のライヴでやっていて反応は上々だし、僕たちは楽しんでやっているので、それがツアーでは届けばいいなと思ってます。曲の流れによってイントロを付け加えたり、アレンジは自由に柔軟にやっていこうと考えてるんで、そこも楽しんでもらえたら。

――ますます初日の名古屋公演が待ち遠しくなります。

宍戸:今回は特に僕たちの表現力がアップしてきているということ、お客さんの熱量も同じようにアップしてきていることがライヴを重ねるごとに感じているので、より心の痒いところや深いところまで触れられるようなライヴになると思います。初日ならではの空気感もあるんで、ぜひ遊びに来てください。

 

The Cheserasera “dry blues tour” -ワンマン公演-

日時:2017年10月7日(土)開場17時30分 / 開演18時00分
場所:今池HUCK FINN
チケット:前売3,000円(税込、ドリンク代別途500円)

チケットぴあ 中部・北陸

Official Site

http://www.thecheserasera.com/

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