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Have a Nice Day! シングル「Fallin Down」&「Fantastic Drag feat.大森靖子」リリース特集【インタビュー後編】

Have a Nice Day!がニューシングル「Fantastic Drag feat.大森靖子」をリリースした。これまでにもおやすみホログラム、world’s end girlfriend、入江陽、Limited Express (has gone?)など、多種多様なアーティストとコラボをしてきたハバナイ。以前から交流のあった大森靖子とのコラボ曲「Fantastic Drag」は、バンドの代表曲になりうるアンセムだ。前回のインタビューではシングル「Fallin Down」にまつわる話を浅見北斗にしてもらったが、今回は大森靖子の歌手としての魅力から「Fantastic Drag」楽曲制作の話、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が発したハバナイの話題などについて語ってもらった。

(インタビュー、文:菊池“カフカ”嘉人 インタビュー写真:永縄貴士 ライブ写真:morookamanabu 画像作製:笠原幸乃)


人間のすごくエモーショナルな部分をサンプリングの組み合わせで生みだす


――ハバナイの楽曲には浅見さんの思考や私生活みたいなモノが、全く反映されてないと感じています。アーティスト自身の体験や感情がダイレクトに曲に現れるアーティストも多くいますが、なぜ浅見さんはそういった事が音楽に反映されないのですか?

浅見:私生活を音楽に反映させるのって、そうした才能がないと無理だなと思う。カニエ・ウェストは自分の娘の歌で超絶良い曲があるけど、自分の場合はそういうメンタリティーが全く音楽にフィードバックされない。それにハバナイの音楽自体が、自分が聴いたり見たりしてきた情報のサンプリングだからあまり関係ないよ。

――例えサンプリングだとしても、ハバナイの楽曲には人の心を動かしてしまうオリジナル性があります。

浅見:楽曲強度の高さはハバナイの圧倒的な強さだけど、そこに唯一オリジナルなところがあるとしたら、人間のすごくエモーショナルな部分をサンプリングの組み合わせで生みだしていること。あとはそれを実現できる音楽的嗅覚だと思う。ともすればベッドルームミュージックのような繊細なフレーズを、ライブフロアのフィジカルなパワーに置き換えられるのは、ハバナイ独特のセンスで。楽曲のある種のナードっぽさと、ライブのフィジカルな組み合わせは、純粋にどちらかを楽しみたい人にとっては受け入れがたいかもね。

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――ナードっぽさ=オタク的な意味ですが、確かに音源の印象とライブで起きている事が乖離していますよね。

浅見:直近の音源だと大森さんに参加してもらった「Fantastic Drag」はとくにそれが顕著かな。ミックスが整理された聴きやすい状態にならないように、world’s end girlfriendにお願いして作業したよ。聴く側が冷静になるような客観性を介入しないように、6分間の中に緩急をつけるんじゃなくて常に音が飽和しまくってるイメージ。それが心地良いと感じる人とそうじゃない人がいるから、聴く人間を選ぶタイプの音源かもね。逆に「Fallin Down」は外部の人と一緒に製作を進めたから、デモの段階から音源になる過程で俺のエゴというか、ハバナイの匂いが漂白された作品でもある。聴きやすいけど強烈なエナジーは全体を通して希薄で、この問題は前回話した地方でライブをする問題とかなり密接な関係にある気がするよ。

――それはつまりどういう事ですか?

浅見:曽我部恵一がsign magazineのインタビューで、どついたるねんとハバナイを例にあげて『彼らの音楽ってハートと思考とPCが全部繋がっているような感覚があって、アメリカのヒップホップの人たちにすごく近いと思うんだよね。ただ、むこうのやつらはもっとクオリティが高いんだけど』と言っていて。その後に“ハバナイの楽曲にはプロダクション、つまりもっと大衆的に向けた品質が欠けている”という問題点を指摘しててさ。さっきの『ハートと思考とPCが全部繋がってる感覚』に加えて『この歌は万人が聴くんだろうな』という質感を楽曲に落とし込むことが、今後の課題であることは間違いないね。曽我部さんのインタビューで比較されているのがチャンス(Chance The Rapper)だから、それは光栄だよ(笑)。

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大森靖子とハバナイは表現として通底しているモノがある


――シングル「Fantastic Drag feat.大森靖子」をリリースしましたが、大森さんと出会ったのはいつぐらいの事なんですか?

浅見:存在自体はハバナイがはじまった2012年頃から知っていて、中心の活動場所も新宿と近かったから嫌でも目に入ってくる感じだった。ただその頃は弾き語り自体に全然興味なかったし、自分とはまるで無関係な人だろうなと思ってたかな。それで「マジックミラー」のMVを観た時に“めっちゃ良い曲じゃん!”と思って。その後たまたまライブを観たらめちゃくちゃ良くて、実際に面識を持ったのは去年だね。元メンバーのさわちゃんが大森さんの事が大好きで、さわちゃん脱退ライブになったO-WESTワンマンにもゲスト出演してもらってる。


O-WESTワンマン「Helter Skelters Disco Showcase」(Full)

――アーティストとしてボーカリストとして大森さんのどこが魅力ですか?

浅見:大森さんの歌は歌謡曲的な複雑な構成と、感覚的で尖っててなおかつ引用とかダブルミーニングが多い凝った歌詞が同居してるから、そのバランスがすごい。弾き語りで作っていても海外の曲だったらありえないようなすごい緻密な構成になってて、再現しようとするとベースラインが複雑でびっくりした。曲だと「オリオン座」や「TOKYO BLACK HOLE」が好きだね。あとアイドルやアニメに偏見がない世代の人の感覚がダイレクトに反映されてて、オレには全然ない感覚だからとてつもなく興味深い。

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――大森さんと一緒にハバナイの曲をなぜ作ろうと思ったんですか?

浅見:大森さんの歌とハバナイのサウンドは絶対的に相性が良いから、前から一度作ってみたいなと。あと音楽の外側だけを見ると全然似てないけど、大森さんとハバナイはどこか表現として通底しているモノがあると勝手に思ってる。インターネットを媒介にしたフィジカルなエモーションみたいなものを感じるというか。『似ているアーティストは誰か?』と言われたら大森靖子がパッと浮かぶし、逆に言うと他にはあまりいないかな。

――大森さんを迎えて楽曲を作る時に、どんな曲にするかイメージはあったんですか?

浅見:最初は「フォーエバーヤング」や「エメラルド」みたいなシンプルで強い曲をイメージしてたんだけど、それだとお互いの持ち味が出づらいし、一緒に作る意味合いが弱いなあと思った。それで「Blood on the Mosh Pit」のアップデート版みたいな感覚で、明確なサビがなくてAメロ、Bメロとかサブのサビが骨格になるような構造の曲にシフトした。オレだけで作れるような曲をわざわざ作ってもしょうがないから、大森さんがいないと成立しない曲を目指したわけだよ。


「Fantastic Drag feat.大森靖子」MV
ショッキングなレベルで歌のレベルが違うから、大森さんは歌う力が圧倒的にすごい


――「Fantastic Drag」の製作を通して大森さんに刺激を受けた部分はかなりありそうですね。

浅見:大森さんはソングライティングもそうだけど、歌い手としての力量がすごくて。ショッキングなレベルで次元が違うから、“歌う力”が圧倒的なんだよね。なので普段のハバナイの曲では採用しない歌詞を、大森さんに歌ってもらえるっていう選択肢があったのはかなり良かった。冒頭の歌詞の感じはハバナイっぽいけど、大森さんのパート直後の《オールナイトBLUE MAGIC〜》からの一節は、オレだけで歌うにはメロディーも歌詞も生々し過ぎるから。俺の声だと陳腐なフレーズも、大森さんが歌うことで音源でもエナジーが生まれてる感じがする。

――サビでは浅見さんの作ったメロディーを大森さんが歌っているのも新鮮でしたし、二人の歌詞がシンクロするフレーズがあるのもこの曲の良さだと感じました。

浅見:大森さんには最初に俺のパートの歌詞とサビのメロディーがある状態のデモを渡して、曲のテーマやイメージは特に伝えてない。そこから大森さんに自分のパートの歌詞を書いてもらったから、お互い共通するフレーズが歌詞にでてくるんだけど、イメージを伝えずにあそこまで親和性のある歌詞を書けるのはすごいよね。汲み取る力が半端ないっていうか。それこそ聴いた人はどのパートを浅見が作って、どのパートを大森さんが作ったか分かるぐらい色がはっきり出てるし。ハバナイ特有のミドルテンポでフィジカルなアンセムに、大森さんの歌詞とボーカル力がリンスニング的な奥行きを作ってる。もちろん、こういう曲を作るつもりだったけど、できあがってみてウルトラ良い曲だなと思った。トラックのアレンジも今のハバナイの気分が反映されてて2017年的アンセムだね。

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――トラックとメロディーの良さはハバナイ楽曲の中でもトップレベルですし、浅見さんのプロデュース能力の高さがよく分かる曲ですよね。これまでもフューチャリング楽曲はどれも外れがなく、むしろすべてがアンセムになっていると言っても過言じゃないです。

浅見:シングルに収録されてる「マーベラス」も同様に、2017年のハバナイのニューアンセムになったという感触がある。ライブでは今年の1月からやってるんだけど、「マーベラス」も「Fantastic Drag」もメロディーが強烈だから、強力なメロディーあってのハバナイですよ。

「Fantastic Drag」は2017年的アンセム、「マーベラス」はロックンロールへのレクイエム


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――「マーベラス」はもともとSoundCloudで公開されている楽曲でしたが、今回収録された「マーベラス」はバージョンが違います。その意図を教えてください。

浅見:ちゃんと録音するとあのRAWな面白さが出なさそうだったから、サクッと録ってあげたかった。あれはあれで自分の中では完成してて。ああいうテキトーな一発どり音源を手軽にあげられるのがインターネットの良さだと思うし。楽曲自体に手応えがあったからライブでやる前に聴けるようにしたかったんだよね。ただリリース音源であの音質で納得してくれる人はあんまりいないだろうから録り直したよ。

――マーベラスはハバナイにとってどんな曲ですか?

浅見:アーティック・モンキーズの「No.1 party antem」みたいな曲がほしくって作った感じかなあ。オレが作るとバラードな雰囲気が全然出ないけどね。あんなバキバキな曲を作ってるヤツらが、美しいバラード作ってるのがカッコ良いなあと思って。歌詞の内容的にはロックンロールへのレクイエムソングなのかな。あとはハバナイで「東京都」って曲をカバーしてるマリリンモンローズへのアンサーソングな一面もある。マリリンモンローズのボーカルの常木くんは当時自分の身近にいて、楽曲を作る能力において“自分よりもこいつ才能あるなあ”と一番衝撃を受けたんだよね。「東京都」以外にもすごい良い曲がたくさんあって。そんな才能あるヤツが自分の音楽を続けられないなんてめちゃくちゃ理不尽で悲しいけど、現実世界はとんでもなくシビアだしそれがエキサイティングだったりするわけだしさ。


「マーベラス 」 MV
 

大森靖子との2マンは2017年の東京にしか生まれないリアイティーを感じてもらいたいよ


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――それと今回のシングルは表題曲の「Fantastic Drag」だけでなく、シングルに収録された3曲すべてのMVが作られたことが話題になりました。3曲通して1つの世界観が立ち上がっていますね。

浅見:監督をしてくれたエリザベス宮地くんに「Fantastic Drag」のMVの相談をしたときに、ワンカットのMVにする提案をもらって。最初の話だと「マーベラス」のMVみたいな街のものを作る予定だったけど、紗倉まなさんが出てくれることになって内容が変化していったのよ。

――人気AV女優の紗倉まなさんの出演は「Fantastic Drag」の楽曲の世界観ととてもマッチしていました。

浅見:昔ネイチャーのライブに来ていた紗倉さんに話しかけたことがあって、それでハバナイのライブにも何度か来てくれるようになったんだよ。そういう流れからMVに出演してもらえるかオファーしてさ、紗倉さんがMVに出てくれたら単純に嬉しいじゃん。だからノリでお願いしたような感じもあったけど、MVが完成したときに紗倉さんに頼んでマジで良かったと思った。存在に華やかなエネルギーがあるし、演技もすごい良いし、とにかく曲の世界観にめちゃくちゃ強度を与えてくれた。

――来週7月5日(水)には渋谷O-EASTで大森さんとの2マンライブがあります。ハバナイにとっても大事な日になるでしょうし、一体どんな景色が生まれるのか非常に楽しみです。

浅見:「Fantastic Drag」をライブでやれる機会は今後そんなにたくさんないだろうからね。せっかくなら2017年の東京にしか生まれないリアリティーを感じてもらいたいよ。

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「Have a Nice Day! Fantastic Dragリリースパーティー Have a Nice Day!×大森靖子 2マンライブ」


・日時:2017年7月5日(水)
・場所:東京/TSUTAYA O-EAST
・時間:OPEN 18:30/START 19:30
・出演: Have a Nice Day! / 大森靖子
・チケット:前売り3,500円  / 当日4,000円
(ローソンチケット、チケットぴあ、e+にて発売中。

Official Site

http://three6pack.tumblr.com/

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