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Have a Nice Day! スペシャル・インタビュー《前編》~ハバナイが巻き起こす止むことのないシンガロング~

スタジアムクラスのアーティストでもアリーナ規模のバンドでもない、東京の片隅で狂騒のフロアを連夜作り続けるバンドが、音楽ドキュメンタリーとして映画化された。それがディスコ・ロックバンドのHave a Nice Day!、通称ハバナイだ。バンドの中心人物である浅見北斗が生みだすリスナーを熱狂させる楽曲と、常識にとらわれないアイディアによる、ネットとライヴハウスを巧みに使った活動で、音楽シーンにうねりを作りだしている。

前述した映画「モッシュピット」では、ハバナイが普段活動しているライヴハウスの倍以上のキャパである恵比寿リキッドルームで開催した、入場料無料のリリースパーティーまでの様子が描かれた。そこで興味深いのが、ハバナイ周辺のアーティストや関係者だけでなく、ファンの存在もドキュメントの当事者として描かれているのだ。さらに彼らは、アジアを代表する現代アーティスト集団・Chim↑Pom(チンポム)やお笑いコンビの虹の黄昏、映画「モッシュピット」の撮影・製作をしたAVメーカー・ハマジムなど、多彩なジャンルの表現者と交流がある。このように様々な人を巻き込めるハバナイの魅力とは一体なんなのだろうか?浅見北斗に話を聞いた。インタビューにはスタッフの長州ちからも参加している。

またハバナイのニューアルバム 『The Manual(How to Sell My Shit)』のリリースパーティーが11月23日(水・祝)から名古屋を皮切りに東名阪で開催される。ライブの入場にハバナイらしい面白い仕掛けが用意されているので、コチラの記事をチェックしてぜひ現場に足を運んでほしい。

(取材、文:菊池“カフカ”嘉人 インタビュー・ライヴ写真:永縄貴士)

 

朝5時頃までずっとオールタイムピークで、いつも異様な熱狂が生まれていた


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――ハバナイを説明する時に欠かせないワードが「東京アンダーグラウンド」です。兄弟分のバンド・NATURE DANGER GANG(以下、ネイチャー)とアイドルのおやすみホログラムなどと作ったシーンの名称ですが、このシーンを追ったドキュメンがハバナイ主演で映画化もされました。浅見さんにとって「東京アンダーグラウンド」はどのようなシーンなのでしょうか?

浅見北斗:「東京アンダーグラウンド」と分かりやすく言っているけどシーンではなくて、自分たちのアティチュードを体現する言葉に近いかな。メディアでも「東京アンダーグラウンド」という言葉が度々登場していたし、オレ自身もライブやメディアでよく発言していたから、そのムーブメントに乗っかってはいたんだけどね(笑)。それを象徴するイベントが、ハバナイの3rdアルバム『Dystopia Romance』のリリースパーティーで、去年恵比寿リキッドルームでフリーで開催したんだ。つまり客のチケット代は無料だった訳。どこからお金を出したかというと、クラウドファンディングのみでアルバムをリリースして資金を集めた。一見、クラウドファンディングはよくあるシステムに思えるかもしれないけど、アルバム購入がそのままライブに直結している事は画期的だったし、華麗な手法だったと思う。そのリキッド当日までを追ったドキュメントが映画「モッシュピット」で、そのライヴにおける「東京アンダーグラウンド」という言葉の重要性はものすごくあったと思う。ただ強烈なアイコンとして機能していたからこそ、言葉がひとり歩きしていた印象はあったかな。

――実際は「東京アンダーグラウンド」はシーンではなく、2015年のハバナイの活動を語る上での重要なキーワードという事でしょうか?

浅見:そうだね、シーンという実感は正直ないかな。映画化されたことで地方の人からみるとそうしたデカいシーンがあるように思えるんだけど、その言葉自体もう死語に近いっていうか(笑)。東京のライヴハウスで「東京アンダーグラウンド」と言ってるバンドは全くいないからさ。

――そうすると浅見さんが2012年から新宿LOFTを中心に開催したオールナイトイベント「SCUM PARK」がシーンという意味では近いですか?バンド、DJ、ラッパーなど、浅見さんが面白いと思う音楽がボーダレスに集まっていました。

浅見:「SCUM PARK」はオレが描いていたシーンにすごく近かったな。狭いライヴハウスでのオールナイトイベントだから異様な熱狂が生まれて、いつも朝5時頃までずっとオールピークタイムというか。ジャンルのごちゃ混ぜ感も含めて、あれはシーンといえるかもしれない。

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――リキッドのフリーパーティーにしろ「SCUM PARK」にしろ、浅見さんは面白い場所を作るのが上手いですよね。クラウドファンディングのやり方はまさにでしたけど、そうした遊び場で遊ぶための仕掛けを用意して、客にも出演者にも「これは面白いことが起きるぞ」と思わせてしまう。

浅見:人に与えられた場所ではなく自分で遊び場を作っていくことはずっとしているね。当然、最初はノウハウも人脈もない訳だけど、理想の形があるなら勝手に始めて継続さえすれば、面白がって集まってくるヤツらもいるし。今のハバナイの状況も自分たちのやりたいことをやったから、来てくれる客や協力してくれる人がいて、1つの場というかコミュニティーを形成できたと思ってる。そうなったのはネットとライブハウスをちゃんと繋ぐことができたのも大きいかな。

 

『東京アンダーグラウンドと盛り上がってるけど、コッチは疎外感を感じてるわ』とネットで野次が飛んでくることもしばしばあったよ(笑)


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――やはりハバナイにとってネットの存在は大きいですか?

浅見:ネットやSNSはオレらの活動とめちゃくちゃ密接だね。曲ができたらsoundcloudとかbandcampにあげられるし。twittreがあるから反応もすぐに分かるし、面白いことやってる人にダイレクトでコンタクトできる。あとクラウドファンディングもそうだけど、リキッド前にはDOMMUNEの配信もやらせてもらえて、ハバナイの圏外にいるリスナーに呼びかけることができたかな。SNSなしに1000人集客はできなかったはずだし、ネットがあったから「なんか東京でヤバい事が起きてるぞ」と地方から嗅ぎつけて来た人もいてさ。今年から積極的に地方に行くようになったんだけど、「なんで映画の上映はあって、ライブは来ないんだ。『東京アンダーグラウンド』と盛り上がってるけど、コッチは疎外感感じてるわ」とネットで野次が飛んでくることもしばしばあったよ(笑)。そういう反応だってtwitterじゃないと拾えないしさ。

――あれだけの熱狂を作ったんですから、地方で待っている人もいますよ(笑)。

浅見:そうだよね(笑)。今年に入ってから北は北海道、南は福岡まで行ったんだけど、ハバナイの曲でシンガロングしてモッシュしている姿を観た時はめちゃくちゃ嬉しかったな。あと地方に行って思ったのは、東京よりもシーンが密接だなって。地方で共演したバンドが結構格上のバンドと普通に知り合いのケースが多くて、東京だとそんな事はまずないからさ。地方の人が想像しているよりも「東京アンダーグラウンド」は局地的なんだ。リキッドを埋めはしたけど、それは東京の人口に対しての比率な訳で。だから今はハバナイをもっと拡張していくことに力を注いでいて、どうしたらもっと多くの人を巻き込んでいけるか思案しているところだよ。

――けれどリキッドで約1000人、O-WESTで約400人を集めるのは、アンダーグラウンドを主戦場にしているとはいえ、なかなかできる事ではないと思います。浅見さんが作った遊び場に、色んなシーンのお客さんが足を運んでいる現状がある訳ですから。そういう意味でもハバナイの活動は巻き込み型ですよね。

浅見:いろんなものを巻き込んで活動がコンパクトにならないようには意識してる。そもそもいろんなものを巻き込む為にも新しい仕掛けがないと面白くないだろうし、単純に「リリースしました」「PV作りました」「レコ発やります」じゃメジャーと同じスタイルじゃん(笑)。いったらオルタナティブな活動だから自由なわけだし、アイディアさえあれば実現できるから。その制限のない緩さを自分たちの強みとして使っている感じかな。

 

バンドの苦しみや内部事情をあえて映像作品にすることで、リキッドまでのドラマが見えるMVにしたんだ


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――それと作詞・作曲・トラックなど、音楽面のことは浅見さんが一人で制作していて、他にもクラウドファンディングの仕掛けなど、ハバナイの活動のアイディアも浅見さんが考えているそうですね。バンドの中心人物という言葉では片付けられないほど、様々なディレクションをしています。

浅見:クラウドファンディングの作業はほとんど一人で準備したから、そうやって言われると確かにほとんど一人で考えてるな(笑)。ただ、もちろん人と協力してアイディアが生まれることもあって「Blood on the Mosh Pit」のPVは、映画「モッシュピット」を撮ってくれた映像作家の岩淵(弘樹)くんとライブハウス「WWW」で働いてる野宮くんと3人で話してる時に閃いたんだ。PVを発表したのがリキッドの二週間前で、曲は聴けば良い曲と分かるけど、ハバナイというバンドの存在自体が全然見えないってことを言われて。それで内藤さん(浅見とツインボーカルをはるハバナイのメンバー)がいなくなったこととか、バンドの苦しみや内部事情をあえて映像作品にすることで、リキッドまでのドラマが見えるものが良いんじゃないかと。それでセルフドキュメンタリーのようなPVになっているんだけど、アイディアだしから2週間ぐらいで作っていて、ネットを有効に使うためにスピード感は大事にしているかな。

 


――ハバナイは大事なライブの前には必ずアクションを起こしますよね。

浅見:O-WESTのワンマン前にも「LOVE SUPREME」「NEW ROMANCE」のPVをMADGEARってヤツらに作ってもらったんだけど、もうひと押し足りないと感じていて。それでMADGEARのキタヤのアイディアで、今のレーベルVirgin Babylon Recordsからライブでよくやる曲を集めたベスト盤を出したばかりだったから、その第二弾をフリーダウンロードでリリースしたんだ。それは今でもフリーダウンロードできるようになっていて、そういうことはその場その場で生まれたアイディアをすぐに形にできる強みかな。メジャーだとある程度どう動くかフォーマット化してるのに対して、インディペンデントな活動はその状況に合わせた対応力が求められる。大きな目標や大枠は決めておいて、そこに向かってどう巻き込んでいけるか。

 

どう考えてもジャスティン・ビーバーしか歌わないだろっていう(笑)


――そうやって人を巻き込んでいける力は、ハバナイのどの部分にあるとおもいますか?

浅見:他の人がやっていないことをしているアイディアの新しさかな? ただ、それもすべて楽曲ありきのことだと思ってる。BPMがゆっくりな曲でもモッシュが起きてシンガロングが止まない光景は、ハバナイでしか作れないと思うから楽曲の良さは絶対的にある。

――「Blood on the Mosh Pit」が特に顕著ですけど、曲だけで聴くとセンチメンタルな雰囲気があるのにライヴだと多幸感に溢れているんですよね。それに通常は横揺れで聴くリズムでもダイブやモッシュが起きるのは、ハバナイのパフォーマンス力あってのことだなと。

浅見:楽曲、メロディー、歌詞、パフォーマンスと色んな要素が混じり合って、絶妙なバランスが生まれているんだろうね。どれが欠けても今みたいな状況は作れていないと思うから。ハバナイの曲って暗い感じなのかな? 自分ではめちゃくちゃ明るい曲っていうか、チャラチャラした曲を作ってるイメージだからさ(笑)。Are you ready?(suck my dick)」という曲で〈いつでも僕らは HEYHEY 恋のバカンス HEYHEY〉って歌詞があるんだけど、どう考えてもジャスティン・ビーバーしか言わないだろっていう(笑)。他の人がこれを歌ったらダサくて聞いていられないと思うから(笑)。

 


――その歌詞についてTwitterで「このフレーズSMAPが歌ったらいいんじゃない?」と言っている人がいて、確かにそうだなと(笑)。歌詞のキャッチーさはハバナイのモッシュピットを作り出す上で大きな役割を果たしていますか?

浅見:それは間違いなくある。歌詞はキャッチとしても使えるような言葉をイメージしていて、分かりやすくてパンチのあるフレーズを意識してる。この言い方だと分かりづらい、これだと耳障り良いなとか、耳で聞いてドカンとくる言葉を採用してるかな。

――映画「モッシュピット」のキャッチフレーズとなった「ロックンロールにドリームとロマンスを取り戻す」は浅見さんが考えたそうですが、これもなるべくして生まれたフレーズだったんですね。

浅見:あれはリキッドの当日に、今日もスタッフで同行してる長州くんと話してる時に浮かんだ言葉なんだよね。

長州ちから:リキッドの楽屋に浅見くんといる時に「モッシュピット」のカメラがまわってきて、「どんな日になりそうですか?」と質問されたんです。それで「ハバナイが今日を成功させたら、ハバナイにもできたんだから“オレたちもできる”と東京のシーンの刺激になれば良いですね」と言ったんですよ。そしたら浅見くんが…

浅見:「つまりロックンロールにドリームとロマンスを取り戻すってことさ」と言ったんだ。

 

フロアに強烈な一体感が生まれて、客が皆シンガロングしているモッシュピットがあったら美しいだろうなって


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――長州さんはこれだけハバナイが話題になる前から近くで観てきていますが、彼らの魅力はどこにあると思いますか?

長州:あ、それならさっきの歌詞の話なんですけど、少し補足してもいいですか? ハバナイがデカくなったのはアイドルとの対バンでオタクが流れてきたのが1つの要因で。アイドルのライヴだとイントロのコールやサビをシンガロングする感じなんだけど、ハバナイのライヴだとそのオタクたちがAメロ、Bメロ、サビとずっとシンガロングしてるんです。男たちが汚い汗を流して拳を挙げながら(笑)。それってメロディーと歌詞の良さがないと絶対に起きないことだから、楽曲の強さがやっぱり根底にある魅力だと思いますね。

浅見:確かにハバナイのライヴにおけるシンガロングはすごいね。客にシンガロングをさせたいと思った理由が、実は長州くんなんだけど。

長州:え? そうなの!?

浅見:長州くんがイベントでDJをやっていた時に「アイドルか歌謡曲しか盛り上がらない」と言ってたのね。実際の現場を見てみても確かにそうで、それがすごく悔しかったんだよ。自分たちのイベントのライヴでどれだけ盛り上がってもDJタイムで客が一番シンガロングしているのは悲しくないかと。それからどうしたら強烈なシンガロングを起こせるか考えてきた。ハバナイの曲はヒップホップ的にラップをする所もあるけど、オレはメロディーが一番大事なんだと再確認することにも繋がったんだ。それから「フォーエバーヤング」も生まれたんだよね。

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――「フォーエバーヤング」はハバナイを象徴するアンセムであり、これまでのライブでハイライトとなるシーンを何度も作ってきた曲ですね。

浅見:皆に歌ってほしいからオレの歌詞は分かりやすい言葉ばかりなんだけど、「フォーエバーヤング」の歌詞ってはっきり言ってすげえ陳腐な言葉じゃん(笑)? 黙読するだけだと「めちゃくちゃダサいな」ってなるんだけど、それをメロディーと合わせて口ずさむともの凄いエネルギーのある歌詞になる。〈フォーエバーヤング〉や〈ロッケンロール〉なんて普通に考えたら恥ずかしいじゃん。だけどライヴフロアという空間だからこそ〈フォーエバーヤング〉や〈ロッケンロール〉という恥ずかしくて、なおかつとてつもなく空虚なワンフレーズによって強烈な一体感が生まれるし、そうした景色を想定してメロディーや歌詞を作ったんだ。〈フォーエバーヤング〉なんて歌詞をみんながシンガロングしてるモッシュピットがあったら美しいだろって思うわけだよ。

後編へ続く

Have a Nice Day!/「フォーエバーヤング」歌詞(ワンコーラス)
ハイハイ 私の心のスネアをキックして
ロッケンロール
ハイハイ 私の心のハイハットをキックして
ロッケンロール
危険なエスコートであの子を連れ出すのさ
ディスコナイト
フォーエバーヤング
フォーエバーヤング
フォーエバーヤング

 


「The Manual」リリースパーティー スケジュール


・2016年11月23日(水・祝)愛知/鶴舞DAYTRIP
・2016年11月25日(金)大阪/味園ユニバース
・2016年12月12日(月)東京/東京都 WWW X

 

「The Manual」フリー・リリースパーティー 名古屋編

・日時:2016年11月23日(水・祝)
・場所:愛知/鶴舞DAYTRIP
・時間:OPEN 18:00/START 19:00
・出演: Have a Nice Day!/ NATURE DANGER GANG / おやすみホログラム
・チケット:無料【アルバムの帯持参 1drink代のみ、当日券-2drink代(1,000円)】

 

映画「モッシュピット」 LIVE VERSION 限定上映

・日時:2016年11月22日(火)、24日(木)
・場所:愛知/名古屋シネマスコーレ
・時間:両日とも21時00分上映
・チケット:1,300円
※映画「モッシュピット」DVD、本編+LIVE VERSIONの2バージョン収録で絶賛発売中

Official Site

http://three6pack.tumblr.com/

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